治療

<ケノデオキシコール酸>

脳腱黄色腫症の治療は,CYP27A1遺伝子変異に起因する胆汁酸合成障害(図1)によって著減しているケノデオキシコール酸の補充療法が中心となる.ケノデオキシコール酸投与により胆汁酸合成経路の律速酵素であるコレステロール7α-水酸化酵素へのネガティブフィードバック(図1)が正常化し,血清コレスタノールの上昇や尿中への胆汁アルコール排泄増加といった生化学的検査異常が改善する.また,その結果として組織へのコレスタノールの蓄積が抑制される.
臨床的にも,ケノデオキシコール酸の投与により下痢は速やかに改善し38),腱黄色腫も退縮傾向を示す場合もある39).骨粗鬆症に関しても骨密度が増加したとする報告がある40).認知機能,痙性麻痺,小脳症状,末梢神経障害などの精神・神経症状や脳波所見に関しても,早期治療による改善が期待できる13,41)
ケノデオキシコール酸の投与量は成人例では750 mg/日13),小児例では15 mg/kg/日41)が推奨されている.本剤の副作用としては肝機能障害が多く,このため薬剤の減量や中止をせざるを得ない場合もある28).乳幼児では本剤投与により肝腫大を伴う黄疸を呈した例も報告されている42).この症例では,5 mg/kg/日の投与量で治療を再開したところ,2.8歳までの観察で肝機能障害の再燃はなく,血清コレスタノールも基準値内に維持され,精神運動発達も良好に経過したと報告されている42).同様に,比較的低用量でも血清コレスタノールの低下が認められる症例があり,推奨量での治療が困難な場合には,副作用がない範囲の投与量での継続が望ましい.
本邦ではケノデオキシコール酸(チノカプセル®)は胆石症に対して認可されており,脳腱黄色腫症に対する使用は保険適応外となる.

<ヒドロキシメチルグルタリルCoA(HMG-CoA)還元酵素阻害薬>

HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン製剤)は高コレステロール血症の治療薬として広く用いられているが,本剤によりコレスタノールの産生も抑制される(図1)可能性が高いことから,脳腱黄色腫症に対してもスタチン製剤による治療が試みられている(保険適応外).スタチン製剤単独の有効性に関しては,ロバスタチン(13mg/日)で血清コレスタノールの正常化と黄色腫の縮小が認められたとの報告43)がある一方で,ロバスタチン(40mg/日)は血清コレスタノール値を低下させなかったとの報告もあり44),その評価は一定していない.
多くの症例ではケノデオキシコール酸との併用でスタチン製剤が用いられており,ケノデオキシコール酸にスタチン製剤を追加することにより血清コレスタノールの更なる低下が認められた報告39,45)や,尿中への胆汁アルコール排泄が正常化したとの報告がある46).一方,併用療法からスタチン製剤単独へ変更することで,コレスタノールの再上昇とともに臨床症状の増悪をきたしたとの報告もある39,46)

<LDLアフェレーシス>

LDLアフェレーシスにより脳腱黄色腫症患者の血清コレスタノールの低下が認められるが(保険適応外),その臨床症状に対する効果については一定の見解は得られていない47-49).また,LDLアフェレーシスの2週間後には血清コレスタノールは前値に戻ってしまうことが報告されている49).脳腱黄色腫症では長期的な疾患管理が必要であることや,治療侵襲性という観点から,LDLアフェレーシスは本症の治療として現実的な選択ではないとする意見がある50)

<個々の症状に対する治療>

脳腱黄色腫症の全身症状のうち高頻度に認められる白内障は手術療法の適応となる.腱黄色腫に関しては,疼痛や機能障害を呈する場合や整容上の問題がある場合には手術療法を考慮する51,52)
本症に関連した精神・神経症状は多彩であり,個々の症状に対する対症療法が必要となる.具体的には,うつなどの精神症状に対する薬物療法17),てんかんに対する抗てんかん薬53,54),パーキンソニズムに対するL-ドーパ療法55),ジストニアに対するボツリヌス療法56)などが挙げられる.てんかんは,抗てんかん薬でコントロール良好な例が多い8).パーキンソニズムに関しては,L-ドーパの効果は限定的であり,ケノデオキシコール酸による治療にもかかわらず進行性の経過をとる例が多いとされている55)